不眠の害

不眠症の人は不眠の害を信じ込んでいるので、日常生活のすべての不快な状態を不眠のせいにしてしまう。昨夜眠りが足りなかったと思うと、もう、今日は身体の具合が悪いものと決めて、自己暗示的に症状を作り出してくる。頭が重い、体がだるい、疲れる…。みな不眠のためだと思い込み、やがて、いろんな神経症状ができてくるのである。

神経性不眠症

眠りは食欲や性欲同様、本能的な表れである。自然に任せておけば、健康人はすべて必要にして十分な睡眠をとっているのである。

我々は、何かの機会にふと眠りにくいことがある。何かの出来事で興奮したとか、心配事があったり、お茶やコーヒーを飲み過ぎた時、昼寝をしすぎたとか、寝る場所が変わったとかで眠れないことは、誰でも経験することである。

普通はただ、眠れないこともあるのだと気にとめないので、それが一時のことで済んでしまうのだが、眠れないことを重大に考えすぎ、眠ろうと焦ると、その興奮のためにますます眠れなくなる。そうなると、ほかの神経症のからくり同様、精神交互作用が働いて不眠症になっていく。

森田療法の治療成績

入院治療の場合、全治60〜70%、軽快20〜30%、未治10〜15%と報告されている。

日誌指導

森田療法では、臥褥が終わってから毎日日誌を書かせる。治療者はそれを点検してアドバイスを記入する。日誌を書かせることによって、患者の生活態度や関心ごと、症状の変化が大体わかる。初期の日誌には、自己の症状がくどくどとと書かれているが、次第に外界の事柄や作業に関する記述が増えてくる。

森田療法の入院治療

森田療法では入院期間を4期に分けている。第1期は絶対臥褥期、第2期は軽作業期、第3期は作業期、第4期は生活訓練である。絶対臥褥についてはすでに説明してあるのでそちらを参照のこと。作業というのは日常生活の活動である。家事、日曜大工、読書など。スポーツ、音楽といったレクリエーションも取り入れる。生活訓練では外出、外泊をして、実生活の訓練をする。全体で2〜3ヶ月が目安。

絶対臥褥(ぜったいがじょく)

絶対臥褥(ぜったいがじょく)というのは、森田療法の入院治療の最初に行われる治療である。患者は個室で一週間、ベッド・布団の上で過ごす。この間、一切の気晴らしごとは禁止である。テレビ、スマホ、ネット、ゲーム、読書、会話もダメ。臥褥の目的は、心身の休養、病気と対峙、生の欲望の喚起、他の精神疾患との鑑別などが挙げられる。

誤った対策

昔、神経症は神経衰弱と呼ばれていたこともあって、自分は神経が弱っていると思い込んでいる患者が多く、もっぱら安静、休養を旨としている者がいる。しかし、体の病気と違って、神経症は、いくら休んでいても一向に良くならないし、長く休めば休むほど活動力は鈍り、暇に任せて症状のことばかり思い悩む。逃避生活に陥っていて、症状は好転しようがない。

心と体

私たちの神経系には動物神経と自律神経(植物神経)の2通りがある。動物神経は骨格筋を支配するもので、手足の動きのように、私たちの意思で外部環境の変化に積極的に対処する。自律神経は内蔵の働きを支配するもので、消化器、循環器、内分泌などがこれに属し、私たちの意思で自由に調節できない。しかし、この自律神経は私たちの情動(感情)と密接に関係していて、情動の変化に伴って、内臓の機能は常に変化動揺している。不安や憂うつ感が強いときは、心臓はドキドキし、息苦しくなり、手に冷や汗をかき、お腹が痛くなって、下痢をする。

作業

森田では作業を重視している。作業が治療に役立つ理由を考えてみよう。第一に、人間は本来、活動するようにできている。活動するのが自然であり、活動するほど心身が健康に発達する。第二に、症状があっても作業を続けられることを体験することによって、症状の脅威が著しく薄れ、自信もついてくる。第三に、気持ちが外向的になり、即物的になる。

みせかけの防衛単純化

私たちが生きている限り、不安はつきものである。しかし、正常人と神経症の不安は異なる。正常人の不安は時と場合によって合理的に流動変化し、私たちの生存に役立つように働いている。しかし、神経症の場合は、不安がある一定の対象のみに向けられ、それが私たちの生活を委縮させる作用がある。